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コラム

2022年08月03日

「江戸の三男(さんおとこ)」いつの時代もイイ男はモテるもの~連載75

草食男子という言葉が一時流行りましたが、男の中の男。女性だけでなく男も惚れる男の話は最近とんと聞かなくなりました。

実際にいる男性の中で、江戸人が選んだ男の中の男を「江戸の三男」と呼んでいました。いったいそれはどんな男だったのでしょうか?

答えは火消しの頭・力士・与力。この三職が江戸の三男です。

まず、町内の顔役でどんな揉め事をその貫禄で丸く収めるのが火消の頭です。血気盛んな命知らずの若者を従えて、火事となればどこにでも飛んで行き鬼神の働きをします。頭の信頼の厚さは抜群でその魅力は男侠(おとこぎ)というものでしょう。この「男侠」という言葉もすっかりご無沙汰しています。

お次は力士。闘う勝負師の心意気は待ったなし。当時は今のように場所数は圧倒的に少なかったのに、さほど働かずもお金持ちで豪快に遊んでしかもきっぷが良い。女性が相撲を見ることの出来ない時代には、力士は男っぽい職業で、太った身体は裕福さの象徴となり、ただそこに居るだけで目立ち、気は優しくて力持ちのスポーツマンは文句なくモテモテでした。

最後に与力。与力は町奉行配下の同心の上役で、体制側の役人で、時代劇では「八丁堀の旦那」と言われて下町在住。話し方は武士言葉の「ござる、ぞんずる」ではなく、「来てみねえ」「やってみねえ」と親しみやすく、給料以外に役得と称して副収入もあったので、暮らしは豊かで、遊び方も粋。そして、仕事柄罪人を扱うために、不浄役人と呼ばれて、他の武士とは差別され、家の格からすると将軍に拝謁出来るはずなのに、実際には江戸城に入ることも許されませんでした。こういうことが彼らを身近に感じさせ、町人のような髷を結い、身なりは大名並みに美しい。これはやはりモテますね。

最後におまけ。江戸のイイ男の代名詞は歌舞伎十八番でお馴染みの「助六」でしょう。

助六は究極のツッパリ少年で非日常の男で芝居中の人物です。「助六」といえばいなり寿司と海苔巻きの詰め合わせ。「助六」と呼ぶようになったのは江戸時代中期のことです。「助六所縁江戸桜」の通称から取られたもので、 当時、江戸の町には贅沢を禁止する倹約令が出されていて、江戸前の魚を使った握り寿司に代わり、油揚げを使ったいなり寿司とのり巻きとのコラボが登場し、江戸の人々に親しまれ、油揚げの「揚げ」とのり巻きの「巻き」から「揚巻」と呼ばれるようになりました。そして「助六所縁江戸桜」の主人公・助六の愛人である吉原の花魁の名前も同じく「揚巻」という名前だったので、寿司の揚巻も歌舞伎の助六の人気にあやかるようにと、「助六」と呼ぶようになったのです。

 

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酒井 悦子
  • 伝統芸能コーディネーター / 筝曲演奏家

幼少より生田流箏曲を学び、現在は国際的に活躍する箏演奏家。

箏の修行と同時に、美術骨董に興味を持ち、古物商の看板も得る

香道、煎茶道、弓道、礼法などの稽古に精進する一方で、江戸文化の研究に励み、楽しく解りやすくをモットーに江戸の人々の活き活きとした様子と、古き良き日本人の心を伝えている。

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