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コラム

2022年06月02日

「竹行李(たけこうり)作りで自ら稼いだ五十銭の重み」~本紙読者投稿より

私が子供の頃、周辺の農村における現金収入は、養蚕と、竹行李(たけこうり・竹で編んだ箱)作りが主でした。
私の家も貧しく、小遣いなど、正月で十銭、お祭では五銭くらいしか貰えなかった覚えがあります。

昭和14年、私が小学校六年生の夏休みの話です。友達の家が行李を作る仕事をしていたので、作り方を教えてもらいにいくことになりました。一生懸命習いました。

そして何日か通ったある日、
「上手に作れるようになったから、これから作ったものには少しお金をくれる」
と言われました。嬉しくてたまりません。毎日通って、夢中で作りました。

夏休みも終わりに近くなった頃でした。
「よく頑張ったね。今日はお金を上げるよ」
と言われ、五十銭硬貨を一枚いただきました。この頃は、重労働一日の賃金がちょうど五十銭くらいだったと覚えています。

天にも昇る気持ち。
「ありがとうございます」
と礼を述べ、五十銭硬貨を握り、胸で抱きしめるようにして橋って帰ったあの日の思い出。
自分で作った行李、働いて稼いだお金の尊さ、有難さをしみじみ知り、一生忘れる事はで来ません。

「芸は身を助ける」との諺のように、行李作りを覚えたおかげで、その後も行李を作り、家系の助けとなり、大変役に立ちました。

 

五十銭硬貨の重み今も手に 十二の夏の行李の編み代
(静岡県 H・K)

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