コラム
2021年11月11日
「丁稚奉公の兄の思い出」~本紙読者投稿より
私より3歳年上の兄は、小学校を卒業後、親戚が経営するかつお節店に住み込みの丁稚奉公に行きました。
薮入り(奉公人が休暇をもらうこと)で帰ってくるときには、新しい着物を着て、風呂敷包みを持って、お土産はいつもかつお節でした。そんな兄が大好きでした。
兄が帰ってくると両親も喜んでいました。母の手料理のご馳走の味は忘れられません。兄は住み込みで苦労をしたかと思うのですが、いつも笑顔でした。
その後、兄は志を決めて、横浜の会社へ勤めることになりましたが、やがて召集。父から「兄が招集された」と電報が入り、勤めていた会社を退職。徴兵検査にも合格し、入隊となりました。
入隊前日に、サトウキビの節をきれいに削り、兄、妹の二人で、笑顔で会話をしながら食べた。その日限りで兄との永久の別れになるとは夢にも思いませんでした。今での兄の姿は脳裏に焼きついています。
兄は終戦間近の6月30日に、23歳の若さで、レイテ島カンギポット付近にて補給物資が途絶えて戦死しました。白木の箱に白紙と石ころ一つが届いたときの両親の涙は忘れません。私は何が起きようとも戦争は絶対に反対と叫びたい。
(静岡県 M・T)
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