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コラム

2021年10月05日

「戦死した兄と交わした写真」~本紙読者投稿より

私は戦争当時、名古屋にある大きく立派な工場に勤め、寮生活を3年間送り、後に退職。隣の伯父さんの家で募集をしていた、沼津の麻糸紡績沼津工場に、妹と働くこととなりました。
狩野川が流れ、香貫山の白百合は正に絶景美でした。

戦争が厳しさを増し、朝鮮の方々もいました。寮の部屋も汚く、不潔さには困り果てておりました。石油の空き缶に湯を沸かし、衣服を浸して洗濯という生活を送っていました。

その頃、横浜の会社に勤めておりました三つ上の兄と、お互いに写真交換をしたのです。兄が20歳、私が17歳の時でした。
その後もしばらく、一人で二台の織機を受け持つほどの忙しさ、苦労の連続でしたが、若さで乗り越えました。

ある日
「兄召集スグカエレ」
と、父からの電報が届きました。すぐに会社を退職し、義理の姉となれない百姓仕事に専念した。

間もなく3つ上の兄が徴兵検査に合格し、出征。その姿を見送りました。

戦争は激化し、御前崎方面よりB29が編隊を組み、毎日飛来したあの恐怖は今でも忘れられません。
義理姉が鉢巻、たすき掛けのいでたちで、竹槍で敵を突刺す練習をしていましたが、その真剣勝負の姿が脳裏に焼きついております。

兄は終戦間近の6月30日、レイテ島カンギポット山付近において、補給が途絶え、戦死しました。

兄との想い出の写真は、自室に、額に納めて飾り、亡き兄を忍び、眺めています。(静岡県 M・T)

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