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コラム

2022年08月15日

「湖南戦線を征く3―戦場での出会い―」~本紙読者投稿より

昭和19年8月、湘桂作戦に参加、中国大陸湖南省を経て連日連夜行軍が続いた。
8月10日、大部隊の補充兵が我が部隊と併行して行軍した。まだ内地から来たばかりの新兵であった。
「どこの部隊か。何師団か」
と声をかけると
「四国の四十師団です」
と応答があった。四国の兵と分かり、
「香川出身の兵はいるか、詫間の兵はいるか」
と大きな声で呼んでいると、補充兵の中から3人現れた。3人とも召集兵で、戦地ははじめて。湖南の山奥で同郷人と出会えたことに、嬉しさで手を固く握り合った。そしてお互いの健康を確かめ合った。

暗闇の中なので十分に顔も分らないが、4人で歩きながら話をした。新兵は補給も無くお粥をすすりながらの行軍が続いていたという。

私の部隊はすでに大陸生活6年。どんな状況下でも時給自活して行動を続けていた。時には大名殿様のような贅沢な生活を。また時には乞食以下の生活を送り、今日一日なんとか生命があったという、明日の命の保障もない生活の繰り返しだった。

一緒に行軍すること約20分、会話は尽きなかった。分かれるときには、白い砂糖(当時は貴重品。命の次に大切であった)を、軍隊から支給される白い靴下に入れ、また大きな大根を4キロほど持たせた。
「これで元気を出して頑張れ。決して生命を粗末にするな」
と言って渡したのだ。

手紙が出せるようになったら、お互い故郷の両親へ出そうと約束をして、武運を祈って別れたのだ。
(香川県 K・Y)

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