コラム
三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!
連載8「新生活」
4月ということで心機一転、新生活が始まったという方も多いかと思います。
統計はとってませんがやはり落語界も春入門が多い気がします。
落語会の客席は平均年齢が高いので冬から春に若者が通ってると「弟子入り志願かな…」と思ってしまいます。
関係ないですが若い女性がいると楽屋が分かりやすく色めき立ちます(笑)
私も入門は春でした(2月ですが)。
そういえばまだ私の入門エピソードを書いてなかったのでその話を。
落語会に通ったり本を読んだりしてその人柄にひかれ好楽の元に弟子入りを決めた私はまず師匠のスケジュールを調べました。
ほとんどの弟子入り志願者は寄席などの出番終わりに楽屋口で出待ちをし、入門をお願いします。
が、あいにく師匠の出番と私の都合が合わず出待ちが出来ません。
そこで思い付いたのがしのぶ亭の存在です。
寄席兼自宅。
このプライバシーの尊重が叫ばれる現代社会において、自著やテレビなどで自宅の場所を公開している落語家は数少ないでしょう。
というかうちの師匠だけかもしれません。
おかげで弟子入り志願をするチャンスが出来ました。
ネットで住所を確認し、履歴書を書き、手土産の日本酒を購入し、いざ根津へ。
Googleマップが示す場所にたどり着いたのですがそれらしい建物がありません。
周囲をグルグル回って、改めてGoogleマップが示すオシャレな住居の表札をよーく確認してみると【Ieiri】と書かれてます。
イエイリ→家入→師匠の本名!
なんとなく庭に松が植えてあり表札には【三遊亭好楽】と筆で書かれているような日本家屋を勝手に想像してたので、「英語かい!」とちょっと面食らいました。
ですがいざご自宅を目の前にするとインターホンが押せません。
人生かかってますし、なにしろ子供の頃からの人見知りで電話すら大の苦手な人間ですから、人の家のインターホンを押すという行為はものすごくハードルが高いです。
その日は一時間ほど師匠宅前の七倉稲荷神社や不忍池らへんをウロチョロして帰宅。
当時付き合ってた彼女にどうだったか聞かれましたが、本当の事を言うのは恥ずかしかったので「ピンポンしたけど不在だった」と嘘をつきました(笑)
その数日後、このままではいけないと思い直し、勇気を出してインターホンを押すと女性の声で返事が。
弟子入り志願の旨をお伝えするとおかみさんが出てきて下さいました。
「お父さん、今出かけてるから駅前の喫茶店でちょっと待ってて」とのことでしたので、指定の喫茶店へ向かいます。
今だかつて無い程激しい鼓動を胸に、師匠の来店を待っていると、30分程して日曜夕方のテレビで見る三遊亭好楽その人が!
私を見かけると笑顔で第一声。
「落語家になりたいの~?」
軽い!
めちゃくちゃに軽い!
しかも手を振りながらです。
今まで読んだ本や落語家へのインタビューなどでは入門志願は二回は断られるのでそれでも食い下がるべし、とあったのでその覚悟でしたが、うちの師匠はまったく違いました(笑)
それから履歴書をお渡しして今までの経歴などの話をし、無事入門が決まりました。
夏頃までにはとってもらえるんじゃないかとなんとなく予想してましたが半年前倒しです。
なんなら師匠からは「もうすぐ30歳か~。もっと早くくればよかったのに(笑)」とすら言われました。
そこからは怒涛の前座修行が始まります。
慣れないことだらけで諸先輩方に怒られることも多々でしたが、なんとか二ツ目まで昇進することが出来ました。
苦手だった電話も焦らずかけられるようになり、飲食店で店員さんを呼ぶ時も大きな声で「すいませ~ん」と言えるようにもなりました。
30歳を過ぎても人間変われるものですね。
チャレンジすることは何歳になってもプラスの影響を与えてくれます。
この春から新しく習い事で義太夫を始めることにしました。
どんな刺激が待っているのかとても楽しみです。
皆様にとってもよき出会いのある春になりますように!
お知らせ
三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.29
日時・5月14日(土)14時開演
会場・亀戸梅屋敷
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
予約、問合せ・pontathe2nd@gmail.com
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- 三遊亭ぽん太
- 落語家
- 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて180席以上ある
- ぽん太さんのHP
https://pontathe2nd.amebaownd.com/
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