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コラム

2021年09月03日

「寄港した船に乗った兄に会えず…」~本紙読者投稿より

昭和18年、私が19歳で、隣町の軍需工場に勤めていたときの話。

兄が広島の港に入港した船に乗っているという知らせの電報が入った。兄は召集で輸送船に乗っているらしいという事だけは解っていたのだが…。

「それっ!」とばかりに面会へ行くことになり、私も両親の付き添いということで会社を早退し、同行することとなった

家に帰ると、ペッタンペッタンと餅つきの音が聞こえた。なんと悠長な、と思ったが、赤飯も炊いて、十分な食料を持ち、夜行列車で広島へ向かったのだ。

広島の町の宿に泊まり、朝、勇んで港へと行った。

しかし、港には船など一艘もない。港の管理人に聞くと、その船は今朝早く、再び出港してしまったとのこと。

母はへなへなと路上にしゃがみ込んだ。それでも無事修理を終えて出港したのだから仕方がないと、港を後にした。

しかし、せっかくここまで来たのだから、せめて大阪見物でもして帰ろうということになり、父だけ先に帰り、私と母は市中見物へと足を運んだ。

道頓堀の川縁で
「今年19歳になる女はいないか」
と、占いの男が大声で叫んでいる。私は正にその19歳なのだが、何を云われるのか怖くて、母の影で話を聞いていた。

この年の女は運勢がとても良く、配偶者に恵まれ、金運良くと、良いことづくめでホッと胸をなぜ下ろした。

その後、幸いにも兄は無事に生還した。これも占いが当たったということでしょうか?
それにしても、軍の秘密だから入港も出港も知らせることは出来ないということは理解できるが、日本の港へ寄港したと聞けば、日本の何処へでも飛んでいき、一目でも会いたいと思うもです。
(静岡県 S・O)

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