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2021年09月02日

「駄菓子屋の迷路の奥にひらひらと奴凧ゆれ老婆が座る」2021年9月入選作品|老友歌壇

老友新聞2021年9月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

駄菓子屋の迷路の奥にひらひらと奴凧ゆれ老婆が座る

福田 浩明

駄菓子を買いに来る子供もいないような閑散とした村。季節外れの奴凧。老婆が一人、置物のように居る。心惹かれる情景です。作者の原風景でしょうか。

二 席

クレヨンの色それぞれに園児らの描きし魚は紙面に跳ねる

荻野 徳俊

園児の描く魚は色も形も自由気儘。海を飛び越えて空まで跳ねている魚もいるかもしれません。そんな気分がよく表れています。

三 席

往年の活気を幹に秘めながら閉山の庭に百日紅立つ

岸 慶子

炭鉱に従事する人達の活気に満ちていた頃の鉱山。そんな時代を見つめていた百日紅の木は閉山している庭に今もあります。結句の「立つ」に作者の様々な思いが溢れています。

佳作秀歌

物書けば確認したき字の多く辞書を片手に夜の短し

山岸 とし子

結句「夜の短し」に、辞書で調べものをしている時間の過ぎ去る早さが実感されます。

食べきれぬと分かっていても買ってくる夏野菜どれも美しすぎて

野澤 玲子

人参、胡瓜、ピーマン、トマト、茄子等々夏野菜の鮮やかで艶々した色は、太陽の贈り物とでも言いたいような美しさですね。

ウグイスの声聞きたくて竹藪の小道を抜けて買い物に行く

五木田 時子

桜の下を通りたくてわざわざ遠回りするのと同じように、ウグイスの声を聞きたくて、竹藪を通るという気持ち。共感します。

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