コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
東京五輪・パラリンピックの目的は既に達成されたから無理に開催する必要なし!?
コロナ禍のなかで今夏の東京五輪・パラリンピックは開催すべきか否か? それを考えるうえで、開催の目的は、既に達成しているという見方もできる。
東京大会が日本のスポーツ関係者の間でささやかれ始めたのは21世紀が始まった頃。名古屋が招致に立候補してソウルに破れ(88年大会)、大阪も北京(08年大会)に破れ、1964年の東京大会から半世紀がたとうとした頃、今一度東京大会を! という声が出始めたのだ。
そしてこの声に国会のスポーツ議員連盟の面々と文部省が飛び付いた。
というのは前回の東京大会の時に作られたスポーツ振興法はプロスポーツ(経産省の管轄)も障がい者スポーツ(厚労省の管轄)も取り上げず、体育教育が中心で、しかもスタジアムや体育館などの施設建設は国交省の管轄。
そこでプロも障がい者も含むスポーツ行政の一元化のために新たにスポーツ基本法を制定し、できればスポーツ庁の新設が望まれた。そして日本で5兆円程度の規模だったスポーツ産業を、15兆円程度にまで発展させようと……。
しかし行財政改革が求められるなかで、その推進は難しい。が、オリンピックとパラリンピックの招致に成功すれば、それらのスポーツ行政の改革は一気に進むはず……。
そこで東京が開催都市に立候補(09年)。スポーツ基本法も制定(11年)、オリパラ招致も成功(13年)。スポーツ庁も新設(15年)。スポーツ産業も8.5兆円に拡大。日本体育協会は日本スポーツ協会と改名(18年)。体育の日もスポーツの日と改められた。
「3.11からの復興」「コロナに打ち勝つ」という、「後付」でない東京大会の真の目的は既にほぼ達成されたのだ。ならば、その「お祝いのお祭り」はコロナ禍のなか無理して開く必要もあるまい。
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