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2020年10月22日

知足安分

COVID-19によって行動が制限されたために、我々の生活は大きく変化しました。小生にとっては悪いことばかりだったわけではなく、まず、酒を飲みに行く機会が激減したことで貯蓄が出来ました。しかしながら、一方ではストレスを感じる事が多くなったように思えます。また、肝臓は元気になったような気がしますが、運動不足は確実に肝臓に負担をかけているとも言えます。つまり、肉体的には健康になり、精神的には不健康の状態が続いていると言っても過言ではありません。ふと酒とタバコが頭に浮かんだので、そこはかとなく書き綴ってみたいと思います。

酒は百薬の長

この語源は「漢書(酒百薬之長)」とされていますが、かの有名な「徒然草」では、「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起れ」と書かれており、逆説的に説いています。寝酒はナイト・キャップともいわれ、睡眠薬代わりに使われることがありますが、むしろ眠りが浅くなって夜中に目を覚ましたり、翌朝早くに目が覚めてしまうなど、睡眠の質が落ちることがわかっています。また、麻酔薬の代わりにラッパ飲みさせるようなシーンを映画などで観たことがありますが、やはり飲み過ぎてしまうと体にはダメージがありますし、「アルコール依存症」になる可能性が高くなります。勿論治療薬はありますが、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。

タバコは百害あって一利なし

「ストレスを感じるとタバコを吸う」と言う方もおられると思いますが、タバコにはリラックスさせるような成分はなく、体に良いとされる成分は何一つ入っていません。考えてみれば、病院に「禁煙外来」という診療科があるということからも、喫煙が体によくないと言っているようなものです。 酒もタバコも、自己責任で嗜むのであれば問題ありませんが、両者の決定的な違いは、タバコの害は周りにいる人たちをも巻き込むことです。タバコを吸わない人が煙を吸わされてしまう「受動喫煙」が問題なのです。タバコの三悪とは、ニコチン、タール、一酸化炭素ですが、主流煙中のこれらの量を1とした場合、副流煙にはそれぞれ2.8倍、3.4倍、4.7倍入っているそうです。WHOによると、10年前は、世界で喫煙による年間死亡者数が540万人、受動喫煙による年間死亡者数が60万人だったというデータがあるそうです。これはもう過失致死の枠を大きく超えています。

*宮城県サイトより

薬剤師の端くれとして言わせてもらいますが、タバコや慢性のアルコールはクスリの効果を悪くすることがあるので、治療の妨げにもなります。小生も、昔、タバコを吸っていたことがありますが、以前、鹿児島の学会に向かう飛行機の中でゆっくり寝ようと思っていた時、隣の男性がタバコを吸っていて、煙くて眠れませんでした。そのとき、「あぁ、小生も周りの人たちにこんな嫌な思いをさせていたのか」ということに気づかされ、それ以来1本も吸うことはなくなりました。タバコはとうの昔にやめ、飲酒の量も激減。今は現役で教鞭を執っていますので、多忙な日々を送っていますが、無趣味かつ浅才の小生には、退職後の自分の姿が全く想像できません。体が動くうちは「何か」をしたいと思っていますが、「何か」が見えない状態です。最後は自分の人生に「ありがとう」と言って死にたい、というのが夢なのですが….。「知足安分」、この言葉が脳裏をよぎります。乱筆乱文をお許しください。

佐藤卓美
  • 佐藤 卓美 薬学博士・教授
  • 図書館長 教養・基礎薬学部門長
  • 初年次教育に七転八倒しながら東奔西走しています。
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

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