老友新聞2020年9月号に掲載された俳句入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天

わが胸にブッセの詩あり雲の峰

糸井　榮

ドイツの詩人カール・ブッセの、山の向こうに倖せが住んでいる、と言う詩でしょう。遥かに見える雲の峰に触発されて心の奥に閉じこめていたこの詩を蘇らせたのです。作者は、今もこの詩のような浪漫性を持っている人です。

地

故郷の山河さまよひ昼寝覚

王田　佗介

「山河さまよひ」に望郷の念ひときわの心情が窺えます。懐かしい故郷をまのあたりにした喜びは、目が覚めて虚しさに変わったのではないでしょうか、切ない故里恋いです。

人

田を植うる畦に古りたる旱魃碑

本村　忍生

この田はかつて旱魃で大きい被害があったようです。毎年田植えのたびにこの旱害に思いを馳せ、今年の豊かな実りを願う事でしょう。いつまでもこの歴史を語り続けるであろう貴重な碑です。