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「脱水症」そのサインを見逃していませんか?
今年の春から夏にかけては、新型コロナウイルスだけではなく、梅雨時の大雨、その後の猛暑と体調管理が非常に難しい時期でした。私たちは、水や食事から水分や電解質(主にナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあります。)を摂取しています。また、ほぼ同じ量を体外に排出することで体内のバランスを保っています。このように、体の水分量や電解質の濃度を常に一定に維持することを「体の恒常性」と呼び、生命維持に不可欠となっています。
私たちの体は約60%が水分です。小児では水分量が多く、体重の70〜80%を占めていますが、加齢に伴い高齢者になると50%程度まで低下してしまいます。脱水症は、大量に汗をかいたり、発熱や下痢などの体調不良で水分が失われたりすることで、体内に必要な水分量と塩分量が十分でなくなる状態を言います。最近では本人や周囲の人も気づかないまま脱水状態に陥ってしまう、いわゆる「かくれ脱水」の状態が起こります。脱水状態を放置しておくと、血管や脳などを正常に動かすために必要な酸素や栄養素が行き渡らず、適切な処置を施さないと、命に関わることもあります。
脱水症は、誰でもなる可能性があります。特に高齢者は脱水症に陥りやすいのです。その理由としては、「体内の水分量が減っている」、「臓器の働きが低下している」、「喉の渇きに気づきにくい」、「薬を服用している」ことなどが挙げられます。加齢に伴う水分量の低下だけではなく、喉の渇きを感じにくくなる傾向が強くなることで、腎臓の働きが低下し、塩分濃度を適正に調節できにくい状態になるからです。
そこで脱水症のサインを見逃さないことが重要になります。本人だけでなく、周囲の人も気づいてあげることが重要です。軽度の段階では、口の中や唇が乾燥していたりします。手の甲の皮膚をつまんだ後にすぐに戻らない場合も、乾燥しているサインです。また、「常に眠たくなる傾向」や「めまい」、「ふらつき」などの症状が出ていたり、手足の末端が冷たくなっていたりするときも注意が必要です。中程度になると頭痛や吐き気などの症状が出てきます。極端にトイレの回数も減ります。重度に進むと意識障害が出て、痙攣を生じたりします。この状況では、既に口からの水分摂取では間に合わない可能性があります。直ちに病院に行き、医師の診察を受けるようにしてください。
この様な脱水症には、次の予防対策をご紹介します。
- 食事以外に約1~1.5リットルの水分を摂るように心がけましょう。
- 部屋の湿度や温度を調節しましょう。就寝中に脱水症になる可能性もあります。クーラーが苦手な方もいると思いますが積極的に使用して温度調節をしましょう。
- 定期的に水分補給をしましょう。喉が渇いている自覚がない場合もあるので、周囲の人からも注意してあげてください。
脱水症の予防には、体に必要な水分を定期的に摂取する必要があります。しかし、様々な事情でトイレまでの移動が面倒になったり、失禁の経験などがあったりすると、トイレに行く回数を減らそうと水分の摂取を控えてしまう人がいます。しかし、脱水症は、臓器を正常に動かすために必要な酸素や栄養素が行き渡らず、命に関わることもありますので十分に注意しましょう。
- 勝山 壮 教授
- 日本薬科大学・薬学部教授、博士(薬学)、薬剤師
- アロマテラピー精油や漢方薬などのHerbal Medicineの鎮痛作用機序の解明やがん化学療法に伴う末梢神経障害におけるHerbal Medicineの効果の検討を行っています。
- 日本薬科大学 公式サイト
https://www.nichiyaku.ac.jp/
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