コラム
「献身」―男女平等とは別に、男には男の、女には女の役割があるのでは?
「男は男らしく、女は女らしく」の言葉もつかえない程、男女平等の意識が国民の間にしみわたってきている。
どこまで平等に出来るのか、難しい面も出てきている。
以前、相撲の世界で、土俵の上で倒れた人を救おうと、介護士の女性二人が救急処置をするため、土俵に上がったことが問題になった。私は二人の女性に拍手を贈りたいが、マイクで
「女性は土俵から降りてください」
と放送していた。今尚、女人禁制は日本のいろいろな信仰やイベントに生きている。
もう20年も前になるだろうか。『TVタックル』という番組に出演した時のこと。テーマは食育だった。
話題は京風や美学の方向に流れたが、出演者の田島陽子さんは
「夫婦茶碗はそもそも不平等よ。なんで男の茶碗が大きくて、女の茶碗が小さいのよ」
「それは男の手が大きくて女の手が小さいからよ……ショーケースに並べる時にも、大きさにやや大小をつけて斜めに置いたり、要は見せ方の工夫というもの」
話はまとまらなかった。
京都祇園祭の鉾も、女人禁制だった。何故女は鉾に乗れないのか。
しかし、ついに開放される時が来た。
私はゆかたを着て、B鉾へ行った。既にカメラマンが来ている。
合図とともに、お囃子の人達の中へ入っていった。お囃子二十人はそろいの浴衣を着て演奏している。
せまい。あつい。
「いかがでしたか?」
「気分は高まりますね。でもこれで巡行っていうと、せまくて大変ですね」
ロータリークラブも男性のソサイエティだったが、世界的に女性も入会させようという方向で進んだ。とはいえ、ソロプチミスト(国際的社会福祉団体)は女性のソサイエティで男性会員はいない。
◇
父は晩年、老人ホームでお世話になっていた。とても良い人が父の面倒を見てくれていた。
当時私は、自分の人生で一番忙しかった頃で、なかなか父のもとへ行くのもままならず、介護をしていただいているBさんの好意に甘えていた。
そんなある日。Bさんが笑いながらこう言った。
「Bさんはお父さんの愛人ですか?と聞かれました」
父はBさんに5年間お世話になった。本当に身内のごとく、細かいことによく気が付く、良い人だった。
父はBさんのおかげでとても安らかな終末を迎えた。今も年賀状を頂くが、男女平等でもなく、差別でもなく、人柄の問題だ。介護は献身だ。Bさんのように、家族でもないのに優しく父を見守ってくれた人もいる。
◇
このところセクハラ、パワハラ、ストーカーなど、考えられない怖い事が起きる。
若い頃は私も何回か痴漢に遭った。
母に言うと
「あんたにスキがあるしや」
で終わりだったが、そんな時代は過ぎた。
もちろん、被害者も気をつけなければいけないが、こわい刃物を突きつけられるような犯罪はどうやって防げばよいのか。
女が夜一人歩き出来る国は、世界で日本だけと言っていた時代は、もう無くなってゆくのか。
でも男には男の役割、女には女の役割があるというのは、法律を超えて大切なことだ。
ゆとり教育も大事だけど、やさしさ教育も大切。
(本稿は老友新聞本紙2018年7月号に掲載した当時のものです)
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- 市田 ひろみ
- 服飾評論家
重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。
書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。
テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。
二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。
現在、京都市観光協会副会長を務める。
テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。
著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。
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