コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
商業主義オリンピックが黒字にならないのはオカシイ?
来年の東京オリンピックの開幕まで1年を切った。
最近の五輪は、スポンサー企業の商品を購入して観戦チケットを手に入れたり、聖火ランナーに立候補できるなど、「商業主義」による運営が当たり前に行われている。
この商業主義は1984年のロサンゼルス五輪から始まったのだが、事情は現在と大きく違っていた。
76年のモントリオール大会が、現在の貨幣価値で1兆円を超す赤字を出した(その完済には30年もかかった)。それで84年大会の開催に立候補する都市はロス以外になくなり、ロスも「税金をまったく使わない」と宣言して開催に漕ぎ着け、組織委員会会長に就任した43歳のピーター・ユベロスは、前例のない「商業主義」を取り入れたのだった。
スポンサー企業は1業種1社に限り、入札時の競争から高額の協賛料(約1億2千万ドル)を獲得。放送権料もモスクワ大会(約8千8百万ドル)の3倍以上(約2億9千万ドル)に引きあげ、記念コインの発行収入(約3千万ドル)や入場料収入(約1億4千万ドル)などを獲得する一方、既存の施設の利用等で経費を節減。モントリオールやモスクワ両大会の支出(約14億ドル)を大きく下回り(約5億3千万ドル)、黒字運営に成功。
聖火リレーも1キロ千ドル(当時のレートで約69万円)で売り出し、「聖火も商売に」との非難も出たが、誰でも千ドルで走れるという意味では公平なやり方と言え、聖火リレーの収入約1千2百万ドルは全額慈善団体に寄付。運営費の黒字も米国のスポーツ団体などに回された。
現在の五輪は、このロス方式をIOC(国際オリンピック委員会)が真似た「商業主義」と言えるが、黒字どころか赤字だけが騒がれるのは、誰が儲けているのかな?
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