コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
ボクシングは、近い将来なくなるのか?
5月22日、国際オリンピック委員会(IOC)は、来年の東京五輪でボクシング競技を実施すると決定した。
実は昨今のアマチュア・ボクシング界は(というより以前からずっと!)レフェリーの買収、疑惑の判定など不祥事が続いていた。国際ボクシング協会(AIBA)の元会長がアメリカ国務省から麻薬の密輸にかかわったとして指名手配されたり、組織の金銭関係が不透明でIOCからの援助金をストップされるなど、来年の東京五輪での協議実施が危ぶまれていたのだ。
昨年もワイドショーをにぎわせた日本ボクシング連盟の山根明会長(当時)が、東京大会でのボクシング中止を示唆する発言をした。東京五輪組織委も、会場を両国国技館に決定はしたものの、具体的な日程は未定だった。
しかし、IOCはAIBAの競技団体としての資格を停止したまま、選手を救済する措置として競技の実施を決定、各地域の予選はIOCが独自に行うと発表した。
来年は生き延びたボクシングだが、未来は明るくない。プロボクシングの世界は以前からマフィアなど反社会勢力が跋扈(ばっこ)し、平和の祭典のオリンピックの競技としては暴力的すぎるとの声も高い。IOCバッハ会長もボクシング否定論者だという。
かつて49勝無敗(43KO)の大記録を残したヘビー級王者ロッキーマルシアーノ(映画『ロッキー』のモデル)も「世の中がさらに文明化すると、いずれボクシングは禁止される」との言葉を残した。
《いまから百年後、私たちはグラディエーター(註:古代ローマの剣闘士)のような存在になっているはずだ。歴史上の人物にね》(『無敗の王者評伝ロッキー・マルシアーノ』早川書房より)この発言からすでに50年以上が経ったのだが…。
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