趣味
2018年10月02日
「絶え間なく潮鳴りとどく病棟に雨強く降る梅雨入り近し」2018年9月入選作品|老友歌壇
老友新聞2018年9月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)
一 席
絶え間なく潮鳴りとどく病棟に雨強く降る梅雨入り近し
上田 昭子
潮鳴りと強い雨音に梅雨入りを感じている作者。不穏な音が、入院生活の不安を表現しています。
二 席
川土手の竹藪の中うぐいすのしきりに鳴けり梅雨の晴れ間に
宮本ふみ子
鬱陶しい雨続きの中、うぐいすの声にほっとする「梅雨の晴れ間」の気分がよく出た一首です。
三 席
長き間夫が過ごしし沖縄に泡盛の小瓶求め帰りぬ
山岸とし子
豪華な物ではなく泡盛を、しかも小瓶を買い求めた慎ましさに、夫への想いが伝わるしみじみと良い一首です。
佳作秀歌
山峡(やまかい)の一つ灯りの今し消ゆなりはひ終へて寝に就けるらし
青柳 忠良
山峡に暮らす人の生活を詩的に捉えて魅力的な作品です。旧仮名を使われているので、表記はそのままにしました。
雨降りて硝子の窓に水玉が生まれては落つ生き物のごと
松尾 勝造
水玉が生まれては落ちる、やや強い雨の様子や窓を打つ音までもが想像されます。
蜘蛛の巣の雨の滴がプリズムに変わり輝く夢みるごとく
天野 照華
雨にキラキラ光る蜘蛛の巣。その美しさを夢みるようだと感じた作者です。
墓じまいしたる知人の跡地には茂るがままの草のあふれる
鈴村 三保子
あふれる程の草の様子を淡々と描写する事で、墓仕舞した知人に対する作者の心情が浮き上がります。
あじさいの花が咲いたよ君に似た白く大きな花が咲いたよ
杉山 勝治
北原白秋の『からたちの花』を思わせるロマンティックな一首。幼い頃に歌った歌が作者の心の中にあるのでしょうね。
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