医療と健康
熱中症にかかりやすくなる「慢性的脱水」にご注意!
菜園で吐き気が…熱中症でしょうか?
63歳の女性です。私は趣味で家庭菜園をしており、自宅の庭で沢山の野菜を育てております。
毎日暑い日が続くので、熱中症にならないように、帽子をかぶり、冷たいお茶を飲みながら野菜の世話をしていたのですが、先日、急に体がだるくなり、吐き気がしました。
すぐに家の中に入り、寝転がったのですが、吐き気はおさまらず、めまいもひどくて、しばらくは起き上がれませんでした。
帽子も被り、水分も採っていたつもりなのですが、これも熱中症の症状なのでしょうか。他にもっと良い予防法はあるのでしょうか。
水分・塩分の補給を。慢性的脱水に注意
暑くなる時期は、毎年熱中症で体調をくずしたり、亡くなられる方が大変多いために注意が必要です。今回あなたのお手紙を拝見しても、やはり熱中症であることが一番疑われます。
熱中症という言葉はかなり浸透してきておりますが、熱中症というものは、熱射病や日射病、熱けいれん等と呼ばれている状態が含まれており、そういったものの総称です。一般的に、高温多湿の状況下で人間の体調がおかしくなってしまうことが熱中症であり、そのメカニズムにはいくつかございます。
まずひとつは、塩分の不足による引き起こされる症状です。暑い中で作業をし、たくさん汗をかきますと、汗と一緒に血中の塩分が排出されていきます。そこへ、水分を補給しようと思い、水やお茶などを飲むと、さらに血中の塩分は薄まってしまいます。これにより筋肉がけいれんをおこしたりします。
もう一つは、暑さが続くと体の中の血管が拡張したり、脱水状態となることによって血圧が低下し、体の隅々、たとえば脳の方へ血液が流れにくくなくなってしまうのです。そのため、立ちくらみやめまい、頭痛、嘔吐、倦怠感などの症状が起きます。
さらに熱がこもり、ひどい状態になると、最終的には体内の熱調節が全くできなくなります。そうなると、40度を超えるほどの高熱を出し、それに伴い臓器障害なども起こし、従来から熱射病と呼ばれている状態になります。
このような様々な症状や病態を全て含めた総称が熱中症なのです。対策としては十分な水分、塩分をとるとか、あまり暑いときには運動量を制限する、そういうことが基本になります。
あなたの場合、帽子もかぶって、水分もとっていたとのことですが、やはり暑いときの庭作業というものは、汗もかきますし、運動量も多いと思われます。そういうときに水分だけをとっていても塩分が薄まってしまいますので、熱中症の危険性が高くなります。水やお茶ではなく、塩分が含まれるスポーツドリンクなどを飲んだり、作業時間を短縮したりすることが大切です。
ただし、高血圧の人の場合、熱中症予防だからといって、むやみに塩分をとりすぎてしまうと血圧を上げてしまう恐れもあります。運動の負荷量と、塩分摂取量のバランスを考えていただく必要があります。
近年はとくに節電の意識が強いため、エアコンをひかえたりする方も多いかもしれません。そうすると、慢性的な脱水傾向になり、熱中症にかかりやすい状況に陥りやすくなることも考えられます。あまり無理な節電をして体調を壊してはいけませんので、上手に管理していただきたいと思います。また、本当に暑い日には、外での作業時間を短くするなど、身体の負担を減らすことも必要でしょう。(老友新聞社)
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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