コラム
ひし餅、雛あられ、白酒…それぞれ女の子の成長を願う意味が込められていた? 連載24
日本古来の人形信仰と中国で3月の最初の巳の日に行われていた上巳の節句が結びついたのが桃の節句です。
日本古来の人形信仰とは、草や紙などで作った人形で身体をこすり、自分の穢れを人形に移して川や海に流した風習です。
この様に上巳の節句は川で身を清め、穢れを祓う習慣で、桃の花を入れた桃花酒が飲まれていました。桃の花には桃花の流れる水を飲んだら300歳まで生きた……という伝説があるくらいに、魔や穢れを祓う力があるといわれています。
またこの日には縁起物として、菱餅、雛あられ、白酒、蛤のお吸い物、草餅などをいただきました。今回はそれらの毎年何気なくいただいている縁起物について考えてみたいと思います。
まず、ひな祭りの定番的存在で、雛壇には必ず飾られている菱餅は、なんと人の心臓を象っているともいわれております。また、かつては上に菱型の餅、下に丸い餅を飾っており、それぞれ正月の鏡餅と雛祭りの菱餅になったともいわれています。
見た目にも春らしい三色で、下から緑、白、赤(現在はピンク)の順に積まれ、緑は健康、白は清浄、赤は魔よけを表しています。また緑の蓬は増血剤、白の菱の実は血圧低下剤、赤の梔子は解毒剤になるといわれています。
見方を変えていろいろな説がありますが、雪が解け、若芽が伸び、花が咲くという明るい春の様子を思い描くと、新しい命が輝き生き生きとした気持ちになります。娘に食べさせる事で長寿を願う親の思いが感じられます。
またインドの民話では、度重なる洪水は龍の怒りと考えられていて、それを鎮めるために女の子を生贄にしなければならず、菱の実は子どもの味がするというので、菱の実を龍に捧げたところ、それ以来洪水は治まったというものです。
また、雛祭りといえば雛あられです。桃、緑、黄、白の四色で、餅を砂糖に絡めて炒ったものです。この配色は日本の四季を表しているといわれ、でんぷんが多く含まれ、健康に良いことから、一年中娘が健康で過ごせますようにという親の願いがこめられているのでしょう。
そして白酒。白は邪気を祓うといわれる縁起物です。もともと飲まれていたのは桃の花を浮かべた桃花酒というものでした。中国で桃は邪気を祓う聖木とされていますが、どうもこの味が日本人にはなじめず、江戸時代からひな祭りには白酒を飲むようになりました。
醤油に馴染んだ味醂の甘さが日本人には合っていたのでしょうか? 雛祭りには蛤のおすましも付き物です。蛤の貝殻は他の貝とは絶対に合いません。ぴったり合うということは仲の良い夫婦を表し、二つで一つという意味にもなります。蛤は貧血を防ぐビタミンも豊富なうえ、カルシウムもたっぷりで、これも女の子の成長には欠かせない栄養素です。
最後に草餅。溯る事平安時代の3月3日、婦女子が野に出て母子草を摘み、餅に混ぜて草餅(母子餅)を作ったという記録が残っています。お隣の国、中国でも、1月と9月に蓬餅を食べる習慣があったといいます。蓬は邪気を祓う薬草といわれ、強壮、消毒、止血にも使われていました。
桃の節句に代表されるそれぞれの食べ物には、栄養的にも深い意味があり、どれも女の子の健やかな成長に願いが込められていたのでしょう。先人の知恵と子を思う親の心を、このような行事から再確認できますね。(老友新聞社)
この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。