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2017年04月03日

2017年3月入選作品|老友歌壇

一 席

瀬音高き年の瀬ようやく渡りたり傘寿の身なれば太き息して

上田 昭子

年の瀬を「瀬音高き」ものと捉え、それを渡るとしたところに作者の独自性が光ります。「太き息して」も秀逸です。

二 席

陽が射せば陽の射す方へ移動する猫も幼(おさな)も老いたる人も

荻野 徳俊

寒い一日。皆が、太陽の当たる方へ当たる方へと移動する場面。猫を入れたことで一層雰囲気が出ました。

三 席

孤り居の侘しさかこつ長電話受けつつ思う我も孤り居

藤本 洋子

電話してくる友も受ける作者も共に一人暮らし。抑えた表現に、一人暮らしの気持ちを込めました。

佳作秀歌

古(いにしえ)の世に描かれし女子群像ロマン湧き来る飛鳥美人よ

山岸 とし子

飛鳥美人の壁画は、あの時代の風俗などを伝えてロマンを感じさせますね。

元朝の空澄みわたり境内の樹々より鳥の声透き通り来

宮本 ふみ子

新しい年を迎えた清新な気分がよく表されていて、柄の大きな一首です。

石川の浜の真砂が尽きるともほんにこの世に悪事尽きなし

王田 佗介

石川五右衛門の辞世の歌とされる「石川や浜の真砂は尽くるとも世に盗人の種は尽くまじ」の本歌取り。現在も変わらず犯罪が絶えませんね。

脊振山に初冠雪のきらめきて師走の街が明けてくるなり

櫓木 香代子

脊振山は、日本三百名山の一つだそうです。夜明けの美しい景が思われます。

まだまだぞ我が生命は戦いと思えり除夜の鐘を聞きつつ

金澤 忠男

老いを撥ね返す気概を持って、年が改まる瞬間を迎えられた作者です。

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