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2023年10月05日

いま「図鑑」が人気!楽しみ方と活用法

ここ数年、紙の媒体の図鑑が売り上げを伸ばしているという。子ども向けであっても、大人をも魅了する図鑑が数多あるそうだ。図鑑といえば、読者の皆さんも幼いころに恐竜や昆虫などの虜となった方は多いのではないだろうか。現代の図鑑はかつて私たちが見ていたものから飛躍し、新たな表現で見せている。そこで今号は、「図鑑博士」ともいえる方に、楽しい図鑑の話を聞こう。

図鑑博士 斎木健一さんに聞く

千葉県立中央博物館生態学・環境研究科主任上席研究員の斎木健一さんは、知る人ぞ知る図鑑博士だ。
もちろん仕事柄ということもあるだろうが、生き物を中心とした個人所蔵の図鑑は2千冊を超えるという。その中にはベストセラー図鑑やハンドブックタイプもあれば、古く懐かしい図鑑も資料として含まれている。その斎木さんに図鑑にまつわる話や、上手な活用法を聞いた。

――まず、ひと昔以上前の図鑑と今日の図鑑の違いを教えてください。
【斎木】一言で言うと、昔は絵、今は写真ですね。昔の図鑑は背景も絵で描かれています。細部まで描きこまれた絵もありますが、写真ほどには雰囲気が伝わらないことが多いですね。最新の図鑑は白バックの写真がよく使われています。背景が白いので生き物の細部までよく見えるのです。さらに矢印で重要な部分を示し、文字で説明を加えています。

また、昆虫の図鑑に関していえば、以前は標本、つまり死んだ虫の絵や写真が使われましたが、今は生きている虫を一匹一匹撮影したものも多いんです。

――ものすごい作業量ですね。作る側の真摯さが伺えます。ところで、斎木さんのようにプロの方はどんな図鑑を使っていらっしゃるんですか?

【斎木】植物の場合は、線画で描いた図鑑をよく使います。描き手が生き物の情報を取捨選択して、その特徴をわかりやすく見せたものです。
ある植物の葉脈は、葉の先端に行くと葉の形に沿って曲がっていく。ある植物の葉は、縁がギザギザしている。色ではなくて線でキッチリと情報を伝えてくるんです。

――素人が見ても線画は非常にわかりやすいですね。文字の説明は難しそうですが、人によってはプロ用の図鑑も好みそうです。では、上手な図鑑の使い方があったら教えてください。

【斎木】多くの人は、写真を撮り、帰宅してから図鑑で名前を調べるという手順を踏んでいると思います。このときに、美しい写真を撮ろうとする人が多いのですが、実は、美しい写真と図鑑で名前を調べやすい写真とは違うんです。
ポイントは、様々な部分の写真を取ること。全体の写真、花の写真、葉っぱの写真、葉のつき方が分かる写真などがあると役に立ちますね。また、定規を添えて撮影することも大切です。図鑑には、花の直径◯㎝と記されていることも多いですからね。
ただし、最近は写真からAIが名前を調べてくれる植物図鑑アプリを使うこともできます(笑)。

図鑑の写真をスマホの図鑑アプリで撮ってみて、名前が一致するかどうか試してみるのも、意外と楽しいものです。正解率が高いアプリを見つけて使うのがお勧めですね。
昆虫でも色々な方向から写真を撮るのが大切です。逃げてしまいそうなら、図鑑の写真と同じ方向から撮れると良いですね。図鑑の写真は特徴が一番わかる方向から撮られていますから。

斎木さんお勧めの図鑑

――最後にお勧めの図鑑を紹介してください。

【斎木】まず、孫にあげるなら『おすしのずかん』(白泉社)ですね。お子さんが大喜びする図鑑です。魚を釣るところからはじまるんですよ(笑)。食べ物の元は何かがわかる図鑑です。

『じぶんでよめるさかなずかん』(成美堂出版)のシリーズはすべてひらがな表記ですが、大人でも知らないことが書いてありますよ。

『昆虫新版(学研の図鑑LIVE)』(学研)もお子さんに人気ですね。先程ご紹介した、生きている昆虫ばかりを撮影して作られた図鑑です。

読者自身には『日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑増補改訂版』(メイツ出版)を。これは今の時代だから生まれた図鑑といえますね。鳥ごとにQRコードがついていて、スマホを利用することで鳴き声を聞くことができるんです。

女性の方にも喜んでもらえると思うのは『美しき小さな雑草の花図鑑』(山と渓谷社)です。小さい花がどれほどきれいか、これを見るとわかります。しかも家の周りに咲いているものばかり。お勧めの図鑑はきりがありませんね(笑)。

――本当に楽しそうに図鑑のことを説明してくださって、こちらもうかがっていて感動しました。今日は本当にありがとうございました。

    ◇

『千葉県立中央博物館』
〒260-8682
千葉県千葉市中央区青葉町955-2
電話043(265)3111
開館時間9時~16時30分(入館は16時00まで)

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