医療と健康
上手なお酒の楽しみ方
お酒は「百薬の長」とも呼ばれ、適度な飲酒は体にも心にも良い効果をもたらすことがあるが、飲みすぎると様々な悪影響を及ぼす。
お酒による体への悪影響と聞くと、まずは肝臓にまつわる病気を思い起こすのではないだろうか。肝臓ももちろんだがそれだけではなく、全身に様々な悪影響をもたらすのだ。
肝臓への影響
まずお酒による悪影響で最も頻度の高いものは肝臓病である。アルコール性肝障害は、長年の飲酒により少しずつ肝臓にダメージが蓄積して病状が段階的に深刻化していく。
脂肪肝
その名の通り、肝臓に中性脂肪が蓄積してしまう状態のことで、日本人の3人に1人は脂肪肝と言われている。この段階ではまだこれといった自覚症状は現れないことがほとんどである。「体がだるい」「疲れやすい」といった日常のありふれた症状が、実は脂肪肝からきているという可能性もある。
アルコール性肝炎
さらに飲酒を続け、大量のアルコールを摂取するなどすると肝臓に炎症が生じアルコール性肝炎とよばれる状態になることがある。肝臓の細胞に炎症が生じている状態であるが、人によっては発熱や黄疸、腹痛などの症状が出る場合がある。
アルコール性肝繊維症
肝臓に中性脂肪が蓄積し続け、炎症を繰り返し起こしていると、やがて肝臓の細胞や静脈等の組織が線維化してしまう。
アルコール性肝硬変
上記のような肝障害を長く放置していると、肝臓の組織がさらに線維化し、硬くなり、アルコール性肝硬変へと進展する。ここまで病状が進むと肝機能が著しく低下してしまう。また肝臓に血液が流入しにくくなるため、他の部位への血流が増えてしまい、食道胃静脈瘤破裂や肝性脳症を引き起こすこともある。さらに進行するとやがて肝臓がんにも進展するリスクもあるため注意が必要である。
食道・胃腸への影響
食道への影響
食道と胃のつなぎ目には、胃酸の逆流を防ぐための下部食道括約筋という筋肉があり、食物が通過するとき以外は蓋をする働きをしているが、アルコールを多量摂取するとこの筋肉の働きが鈍り胃酸が食道へと逆流してしまうことがある。すると食道の組織が胃酸にやられて炎症を起こし、「逆流性食道炎」となる。胸やけやみぞおち付近の痛みなどの症状がある。
胃への影響
アルコールの量が増えると、胃を胃酸から保護してくれる粘膜が壊れてしまい、潰瘍が発生したりただれてしまうことがある。嘔吐、腹痛、吐血、血便などの症状が現れる。
大腸への影響
多量飲酒が長年続くと下痢を起こしやすくなり、さらに大腸ポリープもできやすくなる。また飲酒により大腸がんの発生リスクが確実に高まるという研究結果もあるため注意が必要だ。
脳への影響
頭痛
お酒を飲むと頭がズキズキと痛む。あるいはお酒を飲んだ次の日に頭がガンガンする、いわゆる二日酔いといった症状を経験する人も多いだろう。
アルコールは体内で分解されるとアセトアルデヒドという物質になる。このアセトアルデヒドが脳の血管を拡張させ、拡張した血管により周囲の神経が圧迫され痛みを発生させる。
さらにアセトアルデヒドは痛みを強く感じさせる効果もある。
認知症
アルコールの多量飲酒を長期続けている人は脳細胞が委縮を起こし、認知症になる危険性が高いという疫学調査結果がある。
メンタルへの影響
少量・適量の飲酒の場合では、ストレスを解消し気持ちをほぐし、リラックス効果があるためにメンタル的には良い影響があると思われているが、やはり多量の飲酒となるとメンタル面にも悪影響がある。飲酒量が増えるとうつ傾向になったり、不安神経症、精神病にも関係して自殺のリスクも高めてしまう。
お酒と上手につき合うには
一日のアルコールの適量は、男性の場合で純アルコール量20g以下。女性は10g以下とされている。女性は男性に比べてアルコール代謝能力が低く、また体内の水分量が少ないため、血中アルコール濃度が高くなりやすいため男性の半分の量が適切とされている。お酒と上手に付き合うには、この適量を守ることが重要だ。
また週に2回の休肝日を作ることも大切で、その間に傷んだ肝臓の細胞が修復を行うことができるのだ。
飲み会などに出席する場合には、あらかじめ帰る時間を伝えておいたり、飲む量を決めておき、それを越えそうになったら水やお茶に切り替えるなどの自己抑制が必要だろう。また自宅で飲酒をされる方の場合も、家に多量のお酒の買い置きをしない。飲む量をあらかじめ決めて、その分だけ冷蔵庫で冷やすなどの工夫をすると良い。
楽しいお酒を長く健康的に楽しむためにも、適量を守ることが大切だ。
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