コラム
「季節の節目」江戸の一年と年中行事 連載81
(本稿は老友新聞本紙2017年12月号に掲載された当時のものです)
江戸っ子の一年の過ごし方は、季節の移り変わりや行事を思いきり楽しむことでした。年に一度のお祭りに参加して大いに盛り上がり、身近な自然の美しさを堪能するのが江戸っ子流です。今回は年中行事を通して江戸の一年を振り返ってみます。
一月睦月、お正月は現代と同じように初日の出を拝み、その年の縁起の良い寺社に参拝する恵方参りをして新年を祝いました。二日からは商店の新春大売り出しもあり、それを心待ちにしていた人も沢山いたようです。
二月如月、梅見の季節。初午は稲荷神社で祭礼が行われ、その後は花見の季節へと移ります。
三月弥生、雛祭の後は花見も本番となり、中旬は現代にも受け継がれている浅草の三社祭です。
四月卯月、着物が綿入れから袷に変わると藤が見頃をむかえ、江戸っ子が待ちに待った初鰹が出回ります。
五月皐月、端午の節供が終わると大相撲の夏場所となり、28日は川開きの初日、両国では花火が上がります。
六月水無月、厄を祓う「夏祭り」が多く開かれ、15日は武士も庶民も楽しんだ山王権現祭です。
七月文月、七夕には「井戸替え」という井戸の底をさらう行事があり、お盆行事が行われました。
八月葉月、1日は「八朔」江戸城と吉原では大切な日とされ、15日は十五夜の月見が行われ富岡八幡宮の祭礼もありました。
九月長月、1日は帷子から袷に替えた「衣替え」。13日は「十三夜」の月見を楽しみ、各所では秋祭り行われます。
十月神無月、月の最初の亥の日は「玄猪」の日。ぼた餅をいただき無病息災を願い、20日は商家の恵比寿講。下旬からは紅葉狩りを楽しみます。
十一月霜月、現代でも年中行事としてお馴染みの子どもの成長を願う七五三、縁起物の熊手が売られる酉の市。歌舞伎の顔見世で賑わっていたのは猿若町です。
十二月師走、すす払いや大掃除、お餅をついたり、新年の支度をしたりと慌ただしく気忙しいのは今も変わりません。浅草寺では正月用品を売る「年の市」は年内最後の賑わいをみせていました。
いかがでしょうか、江戸の人達はとても上手に一年を過ごし、巡る季節を楽しんでいたのですね。時計という便利な道具に時には触れ回されてしまいますが、過行く「時」をもう少し丁寧に過ごせる毎日を送りたいと考えています。
(本稿は老友新聞本紙2017年12月号に掲載された当時のものです)
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