医療と健康
健康長寿は栄養管理から
クリスマスパーティーに続いて、年末年始は忘年会や新年会など、なにかと飲食の機会が増える時期である。新型コロナウイルスが猛威を振っているが、それでも今年は3年ぶりに飲み会を開催したいと考えている方も少なくないだろう。一方、高齢者の場合は、きちんと食事を楽しめているか、栄養を適切に摂取できているかどうかが心配される。今回は今年一年の締めくくりとして、永く健康的に過ごしていただくための栄養管理について特集しよう。
高齢者低栄養の原因
寝たきりや要介護にならず、出来る限り健康的に長生きをすること。それが我々高齢者の目標だ。QOL(生活の質)を高く保ちつつ生活を送るには、毎日しっかりと活動し、しっかりと栄養を摂取することが肝要である。
しかし高齢になると低栄養状態に陥りやすくなる。若い頃は、むしろ栄養の摂りすぎでメタボに気をつけなければならなかったが、なぜ高齢者は栄養摂取に問題が生じてくるのだろうか。
表に、高齢者にまつわる栄養摂取の問題点として6項目を挙げた。いずれの項目についても年を取るにつれて低下していくものであり、低栄養の原因となるものである。本紙読者にもこれらの項目が1つでも、あるいは複数当てはまるという人はいないだろうか。逆にこれらの能力低下を出来る限り抑えることで低栄養に陥るリスクを回避することにも繋がるであろう。ひとつずつ順番に見ていこう。
食欲の低下
高齢になると運動量が低下するため、それに伴い消費するエネルギー量も少なくなる。また体を動かすことが億劫になるため、食材の買い物へ行く回数が減ったり、食事の支度をすること自体も面倒になり、それが欠食に繋がる。欠食を繰り返すと「胃が小さくなる」と言われる通り、食欲自体が減退したり、食べる量も少なくなってゆく。
現在のコロナ禍において、友人や家族との外食の機会が減ってしまったという人も多いだろう。孤食が続くと食べることへの興味も薄れて食欲減退に繋がることもある。またストレスや鬱などでも食欲の低下を招く。
味覚の低下
舌の表面には「味蕾」と呼ばれる感覚器官が多数存在しており、この味蕾で味を感じ取っている。しかしこの味蕾も年を取るにつれて数が減少してゆき、若い頃に比べて3分の1程にも減少してしまう。味蕾が少なくなると味を感じる感覚も低下してしまうので、せっかく食事をしても美味しいと感じられなくなってしまい、食欲も低下してしまう。
咀嚼力の低下
むし歯や歯肉炎、歯周病など口の中にトラブルを抱えていたり、合わない入れ歯をそのまま使用していたりすると、咀嚼力、つまり食べ物を噛み砕く力が低下してしまう。だからといって堅い食べ物を避けて柔らかい物ばかりを食べていると、栄養が偏ったり、顎の筋力も低下して余計に噛む力が低下してしまう。食べ物をしっかり噛むことが出来なくなると食べるのに時間がかかってしまうようになり、すると自然と食べる量も減ってしまうこともある。
嚥下力の低下
嚥下力とは食べ物を飲み込む力のこと。飲み込むという動作をする際にも筋力が必要であり、高齢になるとこの嚥下力も低下してくる。なかなか飲み込めないため、やはり食べるのに時間がかかってしまい、食事量が減ってしまう。
また嚥下力が低下すると、食べ物を飲み込む際にむせやすくなったり、食べ物や唾液、雑菌などが気管へと入り込んでしまう。これが肺炎を起こす原因にもなるので注意が必要である。
唾液の分泌量の低下
唾液の分泌量も年齢を重ねるごとに低下してゆく。唾液は非常に重要な役割を持っており、唾液の分泌量が減ると咀嚼もスムーズに行えなくなったり、また味覚にも影響し、味が感じられなくなることもある。もちろん口の中が乾いてしまうので、食べ物を飲み込みにくくなってしまう。
消化能力の低下
年をとると消化液の分泌量も低下し、食べ物を消化・吸収する能力も低下してしまう。胃も老化に伴い弾力性を失うため、若い頃と比べて胃の中に多くの食べ物を入れることが出来なくなる。また大腸のぜん動運動も老化と共に低下し、腹圧をかける筋力も低下をするため、便秘をすることも多くなる。便秘をすると食べる量も少なくなり、低栄養に繋がる。
以上のような加齢に伴う様々な能力の低下によって低栄養状態に陥ってしまう。
たとえばこの数か月の間で体重の減少がないか。お米の減りが以前より遅くなっていないか。冷蔵庫の中の食材が余るようになっていないか。これらは食事量が減っているかどうかの判断基準にもなるので、自分自身で注意をしていただきたい。
一日三回の食事というのは健康維持の基本である。高齢者の場合、夫婦二人きり、あるいは自分一人だけで食事をするという人も多いだろう。張り合いがないと思わずに、しっかりとバランスの良い食事を楽しんでいただきたい。
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