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2016年09月02日

2016年8月入選作品|老友歌壇

一 席

子等の声公園になし濡れながら卯の花腐(くた)しを恨むぶらんこ

上田 昭子

「卯の花腐し」とは、卯の花が咲く頃の長雨の事。子供たちを待ち侘びるぶらんこを主語にして、梅雨の憂鬱を表現しました。

二 席

雨止みて舗道に生(あ)れし水溜り五月の空と雲を映せり

松尾 勝造

水溜りという小さな空間に、初夏の爽やかな景色を凝縮させました。

三 席

生き急ぐ十代の子と語り居て逝きし詩人の面影を見る

福田 浩明

懸命に頑張っている、しかしどこか危うさの漂う若者でしょうか。そこに作者が感じた詩人とは誰だったのでしょう。

佳作秀歌

揚げ雲雀今年も無事にここへ来ぬ「五月十三日雲雀来る」と記す

王田 佗介

日記に書いたというだけの淡々とした表現に、今年も来たという嬉しさが溢れています。

新緑の林の影を映したる水面に釣り糸垂らす人あり

飛田 芳野

鳥の声さえ聞こえてくるような静かな情景が浮かびます。

我が庭にはじめて咲きし薔薇の花と友惜しげなく切りて差し出す

石野 文子

初めて咲いた大事な薔薇を惜しげなく切って作者にくれたご友人。嬉しいですね。

溶接工の散らす火花の大中小それぞれ床へ届かずに消ゆ

荻野 徳俊

溶接する際に散る火花。どれも床までは届かずに散ってしまう一瞬の美しさです。

雨宿り遠い昔のローマンス青春時代の一こまよぎりぬ

村上 重晃

雨宿りした軒先に、偶然可愛い女性が駆け込んできたのでしょうか。大事な思い出です。

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