コラム
三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!
連載14「芸術の秋」
ちょっと前までTシャツだったのに今や町中ではダウンを着てる人もいて頭の中が混乱しますね。
暑がりで寒がりなのでこのぐらいの気候がちょうどいいです。
さて秋は落語家的には一番忙しい季節です。
文化の日や敬老の日に起因したイベント、また学校の芸術鑑賞会など様々な行事に伺います。
いわゆる営業仕事というやつです。
老人ホームの慰問もよくありますがなかなか大変です。
一生懸命やっても終演後、聞いて下さってた利用者の方から一言。
「お兄ちゃん、あなたね、声が小さい!」
そんなお小言をもらっても「あなたの耳が遠いんじゃ…」とは口が裂けても言えません。
それでも我々が行くことで、普段はトイレの使用に介助が必要な方が一人で行くと言い出したり、メイクを気にしたりなどいつもよりもキリっとしてますよとホームのスタッフさんに言ってもらえると大変嬉しいです。
ただ昔写真撮影をする際にスタッフさんが恥ずかしがってる利用者の方々に「ほら、撮りましょ!滅多にいないんだから!若い人若い人!」と言ってた時は若けりゃ誰でもいいんじゃないかとは思いましたが(笑)
営業仕事で大事になってくるのは枕の部分です。
通常の都内の落語会でしたら聞き慣れた方が多いので、ちょっとした自己紹介や時事ネタをしゃべって本編に入るのですが、イベントではそうはいきません。
まず自分という人間に興味を持ってもらわなければいけないので冒頭のつかみが大事になってきます。
幸いにも私の師匠は笑点でお馴染みの好楽ですので師匠に関するエピソードなどを話します。
今はそこそこ場馴れしたのですが、前座の時はそもそも寄席の高座で枕をしゃべってはいけないという不文律があるので一人で行く営業はなかなか塩梅がつかめずかなり苦戦しました。
そんな数ある仕事の中で一番思い出深いのは前座修行終わり際に行ったとある病院での口演でした。
病院の文化祭のような催しの一環で患者さんやスタッフさんの出し物に挟まれ私の落語の出番があります。
とてもシュールなコントの後が私の出番だったのですが、どういう手違いか音響操作の方に渡していた出囃子のCDではなく、なぜか雅楽が流れだし物凄く荘厳な空気の中登場。
やりにくすぎる…
よくわからないが適当に舞ってお茶を濁したいところですがそうもいかないので師匠好楽の話題をふってみますが無反応。
そして通常の落語会では携帯電話のスイッチを切ってもらうのですが、院内での連絡用のPHSを電源オフにしてもらうわけにもいかずただただ静かな中を着信音だけが鳴り響きます。
帰りたい…そう思いながら20分程の高座を務めました。
それも二回も。
あと一週間で二ツ目昇進というタイミングでしたが、無性に修行をやり直したくなったことを覚えています。
今年は少しずつイベントのお仕事が戻ってきて日常が戻ってきたような気がします。
普段の演芸場とは違う慣れない会場で苦戦してる若手落語家を見つけたらぜひ笑ってあげてください。
楽しくなくても無理矢理笑っていればそのうち楽しくなりますので!
お知らせ
三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.34
日時・11月27日(日)14時開演
会場・池之端しのぶ亭
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
予約、問合せ・pontathe2nd@gmail.com
※写真は10月21日に開催された葛飾区産業フェアにて
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- 三遊亭ぽん太
- 落語家
- 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて180席以上ある
- ぽん太さんのHP
https://pontathe2nd.amebaownd.com/
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