コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2022年09月20日
84年ロス型商業主義で五輪の金銭問題は解決
昨年開催された東京五輪をめぐり、組織委の元理事と紳士服メーカーの創業者などが贈収賄容疑で逮捕された。それを機会に、1984年ロサンゼルス大会に始まった「商業主義五輪」への批判が高まった。が、それは正しい見方か?
80年のモスクワ大会はソ連(現ロシア)のアフガン侵攻で西側諸国がボイコット。次の大会に立候補していたイランにイスラム革命が勃発。五輪の開催都市がなくなったので国際オリンピック委員会は32年に開催経験のあるロスに2度目の開催を求めた。が、市議会は76年モントリオール大会が巨額の赤字を出したことを懸念。「税金を1セントも使わない」との条件で開催を承認したのだった。
そこで組織委会長のP・ユベロスは徹底した経費節減を断行。スタジアムは32年五輪の会場を改装。体操・水泳はカリフォルニア大学の体育館やプール、選手村も同校の学生寮を使用。
収入面でも1業種1社として企業にスポンサー料の値上げを競わせ、企業看板の広告費で約300億円を計上。TV放送権料も前大会の3倍以上の約700億円に値上げ。記念コインや入場料収入などで合計約500億円の黒字を記録した。
加えて聖火リレーも1キロ3千ドル(当時のレートで約69万円)で販売。その利益約1200万ドルは全額慈善団体に寄付。大会の黒字も全額アメリカのスポーツ団体に寄付されたのだった。
五輪は「税金を1円も使わず」にでもできたのだ。もちろん競技種目数が増加し、パラリンピックも開催する現状と同列には比較できないだろう。
が、現在の「商業五輪」の問題は、どうすれば「ロス型ユベロス式商業五輪」に戻せるか…であり、それは「金もうけ五輪」をやめれば簡単に解決できるはずだ。
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