コラム
「お江戸の動物園」江戸の人も動物が好き~連載73
動物園ではかわいい動物の赤ちゃん達が人気を集めています。どの子達も本当に可愛くて見ているだけで心が和みますし、お母さん達の子育てに私達人間が学ぶべき所も多いにあるものです。
つい先日、懐かしいサーカスの宣伝を目にしました。正直サーカスが健在していたことに驚きました。
サーカスと言えば猛獣遣いを思い浮かべますが、見世物小屋というのがあった時代に江戸の人達は動物に対してどのような思いを抱いていたのでしょうか?ちょっと考えて見たくなりました。
現代の動物園の人気者といえば、パンダ、コアラ、象、キリン、白くまなどでしょうか。江戸の人気動物ベスト5にあがるのは、まず、トラ。なんと大きなトラ模様の猫をトラの子と称して見せていたのですが、江戸末期に本物の豹が来日した時にはトラのメスと思われていたそうです。
続いてヤマアラシ。なぜかこれを見ると「はしか除け」になるという意味不明な宣伝が広まり、かなり評判となって、見せるときには棒で突いて逆毛を立たせ、おまけに拍子木で効果音も入れたという記録も残っています。突かれるヤマアラシは気の毒ですが、そのショーアップには企業努力を感じます。しかし、今でしたら動物虐待になってしまうでしょう。
3番目はアザラシ。天保9年(1838年)江ノ島沖に生息し、海上から江ノ島弁天を拝む「海のおばけ」と評判になっていたところ、地元の漁師の網にかかり見世物になり、良く人になつき手から餌を食べ、見物料は24文でしたから結構な人気がうかがえます。
次は今も人気の象。初めて日本に来たのはインドゾウ。牛より大きな動物を見たことのない日本人にとっては、かなりセンセーショナルな出来事だったでしょう。ただ象は身体が大きい割には以外と神経質で、群衆を嫌ったためナンバー1にはなれませんでした。
堂々の1位はなんと意外や意外、ラクダです。見物料も32文という通常の2~4倍の特別料金にもかかわらず、押すな押すなの大評判。日本にパンダが来日した時の騒ぎに匹敵していたと思われます。江戸の人は洒落こころで首は鶴、背は亀に似ているといい、大変めでたがっていたのだそうです。見方によっては見えなくはないですが……いかかでしょうか。
ラクダは群衆の騒ぎにも動じず、悠然とした姿が人々の心を捕えたといわれ、常に食べるか、寝ているかなので、動きが鈍いことを「ラクダ」と呼ぶようになったのだとか。
その他に誰も見たことはないけれど珍獣とされていたのは、頭は猿、胴は狸、尾は蛇といわれるヌエ。つむじ風の中に住み、人の肌や衣服を切刻むカマイタチ。落雷と供に天から降りてくるライジュウ。嘘つきといわれるニンギョ。川の中に住み、時にして人間を引き込むカッパ。どれも当時の人のジョークと想像の世界が感じられ怖い物見たさの気持ちを駆り立てます。
大人になるとなかなか動物園は縁遠くなりますが、私も久しぶりに出かけてみようと思っています。
(本稿は老友新聞本紙2017年4月号に掲載した当時のものです)
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