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運動器症候群「ロコモティブシンドローム」とは?その対策と予防法
暖かくなり、まもなく大型連休を迎えるこの時期、外出をしたり体を動かすのには最適な季節が訪れた。お子さんやお孫さんと共に行楽へ出かけたり、友人と食事を楽しむなど、さまざまな予定を立てていることだろう。一方で、「外出なんて億劫」「そんな気分になれない」という読者も少なからずいるのではないだろうか。家の中に閉じこもってばかりの人は運動器症候群、通称「ロコモ」の疑いがある。今月はこのロコモとはなにか、その対策や予防法などについてお伝えしよう。
関節・筋肉の運動機能低下
日常生活に支障生じる
「ロコモ」という言葉、老友新聞読者ならば、すでに聞いたことがあるという人も多いかもしれない。正しくは「ロコモティブシンドローム」、日本語では「運動器症候群」といい、足を中心とした運動機能が低下してしまう障害のことである。もう少し詳しく説明をすると、骨や筋肉、関節の機能が低下し、立ったり座ったり、歩いたりといった日常的な行動にも障害が及んでしまう状態である。
ご存知の通り、日本人の平均寿命は年々延び続けており、今や「人生80年」の時代となっている。当然ながら、我々人類はこれほどまで長寿命というのを経験したことが無く、運動器をより長く健康に保つためには、新たな取り組みも必要となる。そこで日本整形外科学会が2007年に提唱した概念が「ロコモティブシンドローム」であり、ロコモを予防するための様々な取り組みが行われている。
また、厚生労働省が進める「健康日本21(第2次)」の中でも、ロコモという概念の認知度を2022年度までに80%にまで上げることを目標としている。2030年には、日本の全人口のうち高齢者の割合が最も高くなり、3分の1を占めるようになるとも言われている。そうなると、高齢者医療費や介護費用などの対策も大きな問題となる。
厚生労働省の調べによると、平均寿命と健康寿命の差は男性で9年、女性では13年の差があるという。この長い期間、何らかの病気や障害をもって生活をしたり、あるいは要介護や寝たきりなどの状態で過ごしていることになる。いかに平均寿命と健康寿命の差を小さくするか。いわば国をあげての「ロコモ対策」なのだ。
健康寿命を短くする
要介護原因の1位・25%
ロコモは、健康寿命を短くする大きな要因のひとつである。足の運動機能の障害は、立つ、座る、歩くなどの日常的な基本動作にも影響を及ぼすことからである。要支援・要介護となった原因を調べてみると、運動器障害によるものが全体の25%で、脳血管疾患や認知症などを上回り、原因の第1位となっている。
生活習慣や老化で発症
では、ロコモはどのような障害で、どのように健康寿命へ悪影響を及ぼすのか。
ロコモとは骨、関節、筋肉などの機能が低下する状態である。たとえば高齢の女性に特に多い骨粗しょう症が原因で骨が脆くなり、ちょっとしたことで骨折をしてしまう。また変形性膝関節症や変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など関節や椎間板の障害。加齢に伴う筋肉量の低下や神経障害。これらが原因となり、痛みや稼動域の制限、バランス感覚の低下などが起こり、体を自由に動かせなくなる。
体を動かしにくくなると、それが原因でさらに筋力量、バランス感覚などが低下して症状は悪化、悪循環となる。そして歩行する際に杖や手押し車が手放せなくなったり、誰かの支えがなければ移動が困難となる。やがて外出ができず閉じこもりになったり、要支援、要介護、寝たきりになってしまうのだ。
すでにお分かりいただけたかもしれないが、ロコモというのは特別な病気というわけではなく、日頃の生活習慣や自然な老化に伴って発症してしまうもの。骨や筋肉というものは早い人ならば40歳代から低下し始め、50歳代からは急速に低下する。また女性の場合は閉経後から骨密度の低下が始まり、骨粗しょう症になる危険も高まるもの。老化には逆らえないが、日常的な食習慣や運動習慣によって、少しでも早めにロコモ対策を行いたいものだ。
7つのロコモティブシンドロームチェック
ではここで読者の皆さんに、ご自身がロコモではないかどうかをチェックしていただきたい。日本整形外科学会の「7つのロコチェック」のうち、1つでも該当する項目があればロコモの疑いがあるという。
①片足立ちで靴下が履けない
②家の中でつまずいたり滑ったりする
③階段を上るのに手すりが必要である
④横断歩道を青信号で渡りきれない
⑤15分くらい続けて歩けない
⑥2㎏程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である
⑦家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である
もし1つでも該当する場合には整形外科専門医による診察を受けていただきたい。
ロコモ予防のポイント
では最後に、ロコモを予防するためのポイントをまとめてお伝えしよう。
まずは運動。特別なスポーツを始める必要は無く、日常的な動作を毎日心がけることが大切である。激しい運動は逆に軟骨や椎間板を痛めてしまう可能性があるので注意が必要だ。
とにかくこまめに動くこと。ただ歩くだけでも筋肉の衰えを予防することができる。敷きっぱなしの布団、あるいはベッドで、一日中ゴロゴロしてテレビを見ていたりすると筋力はどんどん衰えてしまうので、まずは掃除をするなど、家の中をうろうろと歩き回るだけでもよい。できれば外へ出ること。日の光を浴び、歩くという刺激が骨を強くしてくれる。歩く際には姿勢を正し、きちんと腿を上げ、かかとから着地してつま先で地面をけるように意識をする。足を引きずるように歩いたり、腿を上げずにペンギンのように体を左右に揺らすようにして歩くのはよくない。
つぎに栄養。主食、主菜、副菜をバランスよく食べること。骨を強くする栄養素としてカルシウムはよく知られているが、それだけではなく、合わせてたんぱく質やビタミンDも摂ること。筋肉を強くする栄養素はたんぱく質に炭水化物、脂質など。肉、魚、卵などをバランスよく摂取し、加えて乳製品や大豆なども積極的に摂ること。
ロコモ対策は早ければ早いほど良い。そして今からでも決して遅くはない。しっかりとロコモ対策をして、人生80年時代と言われる今を楽しくお過ごしいただきたい。(老友新聞社)
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