医療と健康
食後の胃の痛みが背中にまで広がる…胃腸薬をのむだけでは駄目?
食後、胃の裏側から背中が痛い
65歳の男性です。お腹から腰にかけての痛みに悩んでおります。
最近、胃腸の調子が悪いのか、お腹の痛みと、体のだるさが続いておりました。とくに食事をした後に痛みが強くなり、胃の裏側、背中の方まで痛みが広がるような気がします。
胃腸薬を飲んでもあまり効果はありませんが、食事が終わって、しばらく時間がたつと痛みは和らぐのですが、それでも鈍いような背中の痛みがずっと続いています。今飲んでいる胃腸薬が体に合わないのでしょうか。良い薬があれば教えてください。
膵臓疾患の場合も。胃炎と決めつけずに受診を
今回は胃腸の調子が悪いという方からのお便りです。
腹痛に加え、背中側にも痛みの症状があり、さらに市販の胃腸薬も効かないということですが、このような症状の場合には様々な病気が考えられるため、症状だけで診断をするのは難しいです。
このような症状で一番多いのは、やはり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった上部消化管の病気です。もし潰瘍ができているような場合ですと、市販の薬では不十分ですので、きちんと内視鏡検査を行って診断をし、適切な処方を受けた方が良いでしょう。
さらに、胃や十二指腸以外の部分の病気も考えなければなりません。とくにあなたのように、背中にも痛みがあるという場合に心配なのは、膵炎や、膵がんといった膵臓の病気です。
膵炎はお酒をよく飲む方に多い病気で、アルコールを飲み続けることで膵臓へ慢性的に負担がかかり、炎症が起きてしまうものです。膵がんも同じように背中の痛みが起きることがありますので、検査の結果、胃に病気が見つからなかった場合には、これら膵臓の病気を調べる必要があります。
しかし、膵臓の病気というのは、たとえ健康診断を受診したとしても発見が難しいものです。とくに膵がんは早期発見・早期治療が大変難しい病気ですので、多角的な検査が必要となります。
膵臓の病気を調べるには、採血で血清アミラーゼといった膵臓の酵素の値をみて、異常がないかどうかを調べたり、腫瘍マーカー検査を行う場合もあります。また、画像診断も行いますが、たとえば超音波で膵臓を観察する際、とくに肥満体質の方の場合ですと、内臓脂肪やガスなどの影響で超音波が届きにくく、十分な観察ができないことがあります。
そういう場合は影響を受けにくいCTやMRIによる検査を行ったり、さらに精密な検査をする場合には、造影剤を使ったCT撮影や内視鏡を使って膵管と呼ばれる膵臓の酵素を十二指腸へ運ぶ管に直接造影剤を入れる検査(ERCP:内視鏡的逆行性胆管膵管造影)なども行う場合があります。これらのうち、どの検査を行うべきかを専門医の判断を仰いで決定する必要があるのです。
胃が痛いと感じたとき、とくに痛みが長く続く時には、悪い病気が潜んでいる場合があるので、単純に胃炎と決め付けて市販の胃薬だけ飲めば良いと考えるのは危険です。必ず消化器科を受診して、専門医の診断を受けるようにしてください。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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