医療と健康
突然、意識を失い倒れました。重大な病気?
電車の中で意識を失い倒れました
60歳の女性です。先日、友人と一緒に演劇を観に行き、食事をした帰りのことですが、電車に乗っていたら、突然意識がなくなり、倒れてしまいました。
普段、乗り物酔いはしない体質なのですが、その日は疲れていたのか、それともお酒のせいなのか、吐き気がしてきて、そのうち目の前が真っ暗になって、そのまま倒れてしまいました。
幸い友人が一緒にいてくれたので、怪我も無かったのですが、電車の中で倒れてしまうなんて初めてのことで不安です。乗り物酔いで、意識がなくなることはあるのでしょうか。
神経調節性失神か
立ちっ放しで脳への血行低下
意識がなくなる状況を失神と呼びますが、一口に失神といっても、その原因は実に様々です。その中でも、とくに注意しなければならない原因としては、脳や心臓の病気からくるものです。
脳の病気では、たとえば脳梗塞の前兆であったり、一時的に脳が虚血状態になる、一過性脳虚血発作、また、てんかんなどでも失神を起こすことがあります。心臓の病気では、突然の不整脈により、心臓からの血液の拍出が滞ることで、脳に血がめぐらなくなり、失神するという事もあります。
しかしながら、失神を起こしたからといって、全てこのような怖い病気が原因というわけではありません。人間の体というのは、神経によってバランスが調整されているのですが、その調整が乱れることにより、神経調節性失神というものを起こすことがあります。たとえば小学校の朝礼の時、ずっと立ちっぱなしでいると倒れてしまうお子さんもいるかと思います。また、健診で採血を行った際に失神してしまう方も時々いらっしゃいます。
長い時間、立位を保たなければならないというような状況や、恐怖体験をした時、強い痛みを受けた時などは、迷走神経が刺激され、脈拍が遅くなったり、血管が拡張して血圧の低下を招きます。すると脳に血が行きにくくなり、失神をしてしまうのです。
こういったタイプの失神は、様々なきっかけで発生します、ごくまれではありますが、人によってはお小水をする時に倒れる排尿後失神や、嚥下性失神といって食べ物を飲み込む時に失神してしまう方もいます。今回のあなたの場合、演劇を観てお疲れになり、アルコールも飲まれていて、さらに電車の中で長時間立たれていたようですので、神経調節性失神を起こしやすい状況だったといえるでしょう。
神経調節性失神の場合は、お酒を控えめにしたり、長時間立つことは避けるなど、生活習慣に注意をすることが必要です。万一気分が悪くなった時には、すぐに横になる事が大切です。頭を心臓と同じくらいの高さに下げることで、血圧が低くなった際でも失神を防ぐことができます。下肢への血液滞留を防ぐために、弾性ストッキングを着用したり、場合によってはお薬を服用してもらうこともあります。
また、先にお話をしました、脳の病気、心臓の病気が潜んでいるという可能性も否定できませんので、一度は専門的な検査を受けておくことをおすすめいたします。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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